オタク、日帰りでパンダの王国へ行く
昨年5月、パンダ好きのオタク女がこんな記事を書いた。
内容はいたってシンプル、『パンダにハマったオタクがアドベンチャーワールドへ行きました』というだけの話なのだが。
その後もパンダ熱はとどまることを知らず、所用で大阪に行ったついでに3時間で神戸の王子動物園まで弾丸往復してタンタンを見てきたりなどした。
(タンタン)
麻布大学でのアドベンチャーワールド飼育員・遠藤さんのトークイベントにも参加させてもらい、よいお話をたくさん聞けた。上野動物園にも南関東の端からなんとか1ヶ月に1度通っている。世の熱烈なパンダマニアの皆さんからしたら、水際でちゃぷちゃぷしている程度の浅さだとしても。
で。昨年、前年のシャンシャン誕生に続いておめでたいニュースに世間がわいた。アドベンチャーワールドで新たなパンダが誕生したのだ。75gという超低体重で生まれた仔パンダ『彩浜』は飼育員さん達と母親良浜の懸命な世話ですくすくと成長し、かわいらしい姿で日本中の人々を魅了している(と思う)。
自分はテレビやアドベンの公式ツイッターなどで誕生当初からその成長過程を見ていたが。次第にまた悪い虫がうごめきだした。
「…仔パンダ、見たいなあ…」
前回ブログに書いたとおり、シャンシャンは生後6ヶ月の12月から公開になったものの当初の観覧は超高倍率の抽選で、そして自分は外れまくったため実際に見られたのはそれから2ヶ月後の2月。シャンシャンは生後8か月になっていた。いや、生後8ヶ月だろうが1年半だろうがシャンシャンが愛くるしいことに変わりはないが、だが公開直後の小さな仔パンダ時代を生で見られなかった悔いは残っている。
上野と違い、アドベンはかなり早い段階から仔パンダを公開している。そして観覧方法は抽選ではなく並べば誰でも見られ、1日何回何分という制限もない。つまり、見ようと思えば絶対に見られるのだ。…これ、行くしかなくない?
そこからまた和歌山遠征計画が始まった。仕事や他の用事との兼ね合いで決行は2月頭に決定。再び家人を誘ったが「パンダはいいや。好きに見ておいで」との答え。オタク行事に興味ない素人を付き合わせると互いに不幸だというのは経験でわかっているので、今回も1人旅となった。
が、ここで困ったことが。土曜朝の羽田→南紀白浜便は取れたが、日曜夕方の復路が満席で取れない。また関空経由かあるいは特急くろしおかとも思ったが、日曜が移動だけというのは宿泊費含めてもったいなさすぎる。さてどうする…悩んでいるうちにふと気づいた。
「…土曜夕方の南紀白浜→羽田便、まだ空いてる…?」
アドベンの閉園が17時、羽田行の最終便出発が18時40分。調べてみたらアドベンから空港まではバスで10分弱。…これ、頑張れば行けるのでは。
家人からは「日帰りなんてもったいない。温泉地に行くんだから一泊すればいいのに」と再三言われたが、観光も温泉も前回体験しているので特に惜しいとは思わない。羽田に20時前に到着できればその日のうちに余裕で帰宅できる。決まった、日帰りだ。
そして2月2日早朝、羽田空港。
検査場を抜けて第一ターミナルを端までテクテクテクテク歩き、たどり着いたのは階段を下りたところにある小さな搭乗口。小さい空港行きの便にありがちな、バスで飛行機のそばに行くあれ。
ちなみに搭乗口に並ぶ人々の半数以上の荷物や衣服などにパンダがついていて、上野動物園の入園口前かと錯覚しそうになった。さすがパンダ王国への直行便。
(パンダ王国への入口)
1時間ちょっとで90人乗りの痩せた小さい飛行機は小さな小さな空港へ降りた。都内の平均的なJR駅サイズの空港を出て外の路線バス乗り場に並ぶ。バスは十数分後に来たと思う。
(南紀白浜空港の手荷物レーン。パンダ推し)
やってきたバスに乗った…と思ったら5分かそこらでアドベン到着。実は空港の隣。動物達は離発着うるさくないのか?と思いそうだが、朝昼夕の3往復しか飛行機飛んでないからあまり気にならないのかもしれない。
開園50分前の入園口。先頭付近の人達は車で来たのか、椅子などを持ち込んだ重装備。上野の開園前入園口と同じで『いつもの面々』が顔見知り状態になってるらしい、のはいいのだが。常連らしき一部の人があとから来たお仲間を列の前方に引き入れていく悪しきやり方も同じなのには少々閉口した。
昨年5月にはなかった注意事項。やはり混雑度合いが違うらしい。
開園5分前から始まる宴…もとい、歌って踊ってクイズやる会。
そんなこんなで10時、開園。昨年5月は好き勝手に移動できたが今回は上記のとおり、パンダ帽をかぶったスタッフさん達が人波の前方に数人並び、いわばマラソンのペースメーカーのように速度をコントロールしながら彩浜親子のいるブリーディングセンターへと誘導していく。
(愛らしく飾り付けられたブリーディングセンター入口)
ブリーディングセンターまでは5分かそこら。幸いにも前から三十人くらいの位置を取ることができたのでそのまま建物内へと進む。
…って。いたあああああああああ!!
小さい!白い!ふわふわ!
かわいい。かわいい力ハンパない。大迫選手どころじゃないハンパなさ。うわあなんだこの破壊力。
明るい室内でごろごろする母親良浜、そして周囲をうろちょろしている彩浜(※当時生後6ヶ月弱)。めっちゃくちゃかわいい、かわいい以外の言葉がない。
スマホのカメラしかないのでたいした画像でもないのだが、それでもあふれ出るかわいらしさ。
立ち止まらないで観覧するように言われるが、そこまで殺伐としていないのでシャッターを切りながらゆっくり移動。上野と一番違うのは建物外に出ている最後尾以外は並んでいる人々の隙間からでも母子が見られるということで。殺伐としてないのはそういうのもあるのかなと思った。もちろん、観客の絶対数が違うというのが一番大きいとしても。
こんな感じで隙間を縫って見ることが可能。彩浜が何かするたびに群衆から歓声やどよめきが。
観覧が終わると外で父親・永明がカメラ目線でお出迎え。元気そうでなにより。ちなみに永明の庭エリアはあまり人がいないので好きなだけ見られる。
この日、屋外にある列最後尾札は常に待ち時間30分表示だったと記憶している。実際はもっと短かったような気もするが。
ただ、上でも書いたが屋内に入れば大半の時間は隙間から見えるので、パンダが一切見られないのは多分10分かそこらじゃないかと思う。そういう意味でも観客のストレスが少ない構造の建物だ。
お母さんにじゃれつく彩浜。度が過ぎると教育的指導が。
11時までに2~3周しただろうか。いったんブリーディングセンターから撤収してマリンライブでのイルカショーへ、そして終演後は混みはじめる前に昼食を済ませることにした。
パンダ目当ての自分でも見に行かずにはいられない素晴らしいショーなのだが、天気が良いと逆光になりすぎて撮影すると真っ黒になるという難点が。1日3回やってるのでパンダ観覧の合間にでもいいから見に行ってほしい。ちなみにプールの向こう側は空港なのでタイミングが合うとイルカの後ろで飛行機が離発着する。
昼食は子世代パンダ3頭が暮らすパンダラブ近くにある『ふれあいの里』パン工房で。人手が足りないのか20分ほど待たされたが、パンダ尽くしがかわいかったので実質待ち時間ゼロ。
ここ以外にもテイクアウトから軽食、本格的レストランまで色々あるので、繁忙期の12時半前後でなければほぼ並ばずに食べられると思う。
再びブリーディングセンターへ。お昼時は空くかと思ったがそうでもなかった。彩浜は相変わらず、良浜にじゃれつきながら展示場内を駆け回っている。かわいい。
13時半頃だったろうか、飼育員さんからこんな放送が入った。
「ただいま授乳が始まりました。授乳が終わるとたいてい、彩浜はしばらくお昼寝します」
行列の隙間から撮影。授乳は結構長く、この姿勢のままじっとしていた。自分が最前列に行く頃には寝ちゃっているかもしれないなあと思いつつ、レアかつ愛らしい姿に夢中に。いいんだ、お昼寝しててもかわいいから。
最前列へ。昼寝はしていなかったが眠そう。
ここでタイムアップ。良浜彩浜、そして永明と別れてパンダラブへ。なぜかといえば。
そう、前回も参加したあれ。といってもパンダにおやつがあげられる『パンダラブツアー』ではなく(※参加してると時間なくなる。というかまず取れない)画像一番下の『もっと知りたい!パンダ塾』の方。
実はパンダ塾、シーズンごとに内容が違ってて、しかも参加テーマごとに受講証に終了スタンプを押してもらえる。なので複数回受講している人も多い。この日は3割くらいが再受講者だったようだ。
詳細な内容はネタバレになるので割愛するが、前半は画像の受信機を首から下げてイヤホンをはめ、パンダラブ内を動き回りながら飼育員さんの解説つきでパンダを観察する。一般観覧者と混ざっての観察となるのでイヤホンが必須なわけだ。
飼育員さんが桃浜観覧エリアからの笹補充を実際に見せてくれた…のだが。目測を誤ったのか投げた笹は堀の中へ落下。すぐさま新しい笹の束を投げたのだが、桃浜は堀に降りて落ちた笹を美味しそうに食べていた。いい子だなあ。
観察会後はバックヤードへ移動し、スライド画像と映像、そして人形や実際の色々を使ったパンダという生物の解説へ。本来、2月(冬)のテーマは「春に向けた体力作り」だが、彩浜誕生を受けてか解説全体の半分程度が仔パンダの成長についての話だった。
ちなみに上の2頭の仔パンダ画像および人形は、桜浜桃浜の幼少期と誕生時の大きさ模型。 こういうのが見られるだけでも参加する価値は十二分にある。それと随時質問を受け付けているので、実際にパンダを飼育している方に個人的に気になったことを教えてもらえるというとんでもなく貴重かつ贅沢な経験ができる。ご本尊のことをなんでも知りたいオタクにはありがたすぎるアトラクションだ。演劇系で言えばマネージャーに好き俳優のことを根掘り葉掘り聞けるようなものだもの、あるいは演出家に作品の以下同文。二次元で言えば編集さんとか制作会社の人とかそういうあれかな(※なんでもたとえ話にしないと気が済まない系オタク)。
おやつ体験のパンダラブツアーばかりがマスコミに取り上げられるが、パンダ塾も非常に有意義なので、時間に余裕がある人はぜひとも参加をお勧めする。いや、パンダラブツアーとんでもなくすごいけど。世界のアイドル・パンダ様と至近距離で会えるというスーパー貴重体験だけど。
末っ子から下から2番目に昇格?した結浜、当時2歳5ヶ月。体重は約82kgになったそう。大きくなったねえ。…っていうか、前回も思ったけど年がわりと近い上野のシャンシャンに比べて随分大きいような。前回来訪時は1歳8ヶ月くらいだったのだけど65kgって言ってた。シャンシャンは先月、1歳10ヶ月弱で54kgじゃなかったっけ。
結浜の姉で桜桃双子の妹・桃浜、当時4歳2ヶ月。たしか95.3kgって言ってたような。大人パンダの雌は100kg~120kgらしいので、もうほぼ大人といってもいいような。
前回おやつ体験でお世話になった桜桃双子の姉、桜浜。99kgって言ってたはずなので桃浜よりちょっと大きいのかな。
今回も午後屋外担当だったのだけどプールの縁でずっと寝てて、あーこりゃ顔を見られないかもなあ残念…と思ってたら。16時頃にお目覚めでかわいらしいお顔を見せてくれた。相変わらずの美パンっぷり。
目を細めたおいしいお顔。かわいいオブかわいい。丸顔に大きなお耳の美パンなのに加えて一度近くで会っているのでどうしても贔屓してしまう。
ごめん寝桜浜、氷ベッドでぐーぐー結浜(withお食事桃浜)
パンダ塾で「寝相にも個性があります」って飼育員さんがおっしゃっていたのだけど、とりあえず言えるのは「どんな寝相でもかわいい」
そんなこんなで17時にアドベンチャーワールド閉園。
16時台はどのお土産売店も混むので早めに動くのが吉。相変わらず、想定されている主要な来園者層は関西圏から自家用車でくる家族連れなのだろうなあというお土産物ラインナップ。いや、それが正しいと言えばそうなのだけど。飛行機でも持ち帰りやすく複数箇所に配りやすい小型で大人向けの菓子、風月堂のアドベンオリジナルゴーフルくらいなのだもの。関東民からすると「なんで和歌山まで行って風月堂…」になるあれ。
あ、そうだ。SNS等でパンダ型の串団子がよく上がってるけど、毎回のように売り切れがでるっぽいので食べたい人は早めに確保した方がいいと思う。自分は2回行って2回とも「あとで食べよう」と後回しにしたら午後売切れに。
17時10分ちょっとすぎくらいに空港行のバスが出るのだけれど。この日は結構混んでいて発車時にはぎゅうぎゅうだったので、座りたい・確実に乗りたいと思う方はどうぞお早めに。前回も言ったけど各種交通系ICカードは使えず、現金のみ。
南紀白浜空港はチェックインカウンター1つ、自動チェックイン機も1つ、保安検査場(っていうか搭乗ロビーの入口にくっついた保安検査の機械)も1つ、搭乗口も空港全体で1つ、お土産物屋もレストランも1つずつ、という超絶コンパクトな空港。どんな方向音痴でも迷いようがない構造。
ついでに言うと保安検査通過後はテレビが1台ある小さな部屋=搭乗ロビーにお手洗いと飲料自販機くらいしかなかった気がする。通常使ってるのが羽田や関空、福岡空港といった比較的大きな空港な身にはすごく新鮮。
2階のレストランはアドベンと運営会社が同じ、というかアドベンの支店みたいな扱いらしい。入口横でアドベンオリジナルのお土産も一部だが買えるし、パンダもののメニューもちょこちょこある。ただ、空港が小さく休憩できる場所がここ1ヶ所だけということは、つまり1ヶ所に飛行機を乗り降りするほぼ全員が集中するということで。確実に利用したいならバスで空港に着いてすぐ席を確保しに行った方が無難なのかなと思った。実際、18時頃入口をちら見したら席を待っている人の列ができていた。
あと、これは後日ツイッターの濃いパンダマニアっぽい人の呟きで知ったのだが。アドベンの入場半券をレストランで見せると無料で缶バッジがもらえるらしい。らしいというのは「そんなことどこにも書いてなかったぞおい」ということで。
レジの後ろに彩浜画像の缶バッジが入った籠が置いてあるのは見かけていて、「あれどうやったら買えるのかな」と思っていたものの。店員さんは人手が足りないのかレジに常駐している人がいなくて話ができるような雰囲気ではなく、結局機会を逃したままになってしまったのだ。…一部のコアなマニアだけしか知らないのってもったいないし、後から知ったの悔しすぎたので、そういう情報はバンバン流してほしいぞ公式さん。
そうこうしているうちに搭乗が始まり、20時には羽田に降り立っていた。そこからリムジンバスに乗り、南関東の端へと一直線。お疲れさまでした。
今回の白浜町での滞在時間、約10時間。他の動物やアトラクションをほぼあきらめた結果、ひたすら白黒成分の多い旅だった。提供までの待ち時間含めて35分強の昼食時とマリンライブでのイルカショー20分以外はアドベン内で一切座らなかったので、1人できて正解だった。連れがいたらさすがにこうはできない、気の毒で。
パンダは何歳でもかわいいが、やはり仔パンダのかわいらしさは別格だ。2019年5月現在、彩浜は屋外運動場デビューしてますます活発に愛嬌をふりまいている。アドベンは基本的に1歳の誕生日前後に母子を別展示にするようなので、もし母子が一緒に揃った姿を見たいのであれば8月までに白浜へ行くといいだろう。
ということで。
「日曜最終便が取れなければ日帰りすればいいじゃない」がテーマの関東民オタクの旅の記録終了。なにかの参考になれば幸い。